WHITEPAPER 2026

氷上施設・スケートリンク運営白書 2026

民間事業者による年次レポート

発行情報

発行
テラフォーマーフロストワークス
発行日
2026年7月13日
形式
HTML版 / PDF版

要旨

  • 氷上施設の継続可能性を、設備、電力、運営、指定管理の観点で整理。
  • 通年・冬季・転換型・仮設型リンクの費用構造と運営責任を比較。
  • 仕様書設計、責任分界、委託費妥当性、改善余地の実務論点を提示。
  • 新設・再整備前に確認すべきチェックリストを提示。
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目次

  1. 1. はじめに
  2. 2. 日本のスケートリンク施設の現状
  3. 3. 運営収支の主要論点
  4. 4. 冷凍設備更新と延命運用
  5. 5. 指定管理・委託仕様の論点
  6. 6. 行政資料から見る委託費・指定管理料
  7. 7. 現場から見た改善余地
  8. 8. 新設・再整備前に確認すべきチェックリスト
  9. 9. まとめ
  10. 相談窓口

白書全文

1. はじめに

なぜ今、スケートリンクの継続可能性が課題なのか

スケートリンクは、地域のスポーツ、レジャー、学校教育、競技育成、観光資源として重要な役割を持つ施設である。

一方で、スケートリンクは一般的な体育館や屋外スポーツ施設とは異なり、冷凍設備、製氷・整氷、電力コスト、安全管理、貸靴管理、利用者導線などが密接に関係する特殊な施設である。

近年は、電気料金の上昇、設備老朽化、人材不足、利用者数の変動、指定管理制度における収支責任の重さなどにより、従来型の運営方法だけでは継続が難しくなる施設も出ている。

特に公共施設として運営されるスケートリンクでは、単に「施設を維持する」だけでなく、限られた財源の中で、地域住民へのサービス、安全性、設備更新、収支のバランスを取る必要がある。

スケートリンクは、建てて終わりの施設ではない。

冷凍設備を動かし、氷を維持し、利用者を受け入れ、靴を管理し、安全を確保し、毎年の電気代や修繕費に対応して初めて、地域に残り続ける施設となる。

そのため、新設、再整備、設備更新、指定管理、運営委託を検討する段階では、建設費や初期投資だけでなく、運営開始後に発生する継続的な費用と責任範囲を整理することが重要である。

本白書では、スケートリンク運営に関する主要論点を整理し、自治体、公共施設担当者、指定管理者、設計会社、設備会社、コンサルティング会社が計画段階で確認すべき視点を提示する。


2. 日本のスケートリンク施設の現状

2.1 施設数

日本国内のスケートリンクは、全国的に見ても施設数が限られている。

競技用、学校利用、レジャー利用、観光施設、公共施設、民間施設など用途は多様であるが、施設数そのものは多くない。

このことは、スケートリンクが地域にとって希少なスポーツ・レジャー資源であることを示している一方、専門人材、専門業者、運営ノウハウが分散しにくいことも意味している。

施設数が限られる市場では、一般的なスポーツ施設の管理ノウハウをそのまま当てはめることが難しい。

冷凍設備、製氷、整氷、貸靴、安全管理など、氷上施設特有の運営知識が必要となる。

2.2 公共施設と民間施設

スケートリンクには、自治体が保有する公共施設、民間企業が運営する施設、商業施設内に設けられる施設、季節イベント型の仮設リンクなどがある。

公共施設では、住民サービス、教育利用、競技育成、地域振興といった公益性が重視される。

一方で、民間施設では、収益性、集客、イベント、スクール、物販、飲食などの事業性が重視される。

ただし、公共施設であっても運営コストは現実に発生する。

電気代、冷凍設備の保守、整氷、修繕、スタッフ配置、貸靴管理などの費用を無視して運営計画を立てることはできない。

2.3 通年リンク、冬季リンク、転換型・仮設型リンク

スケートリンクは、運営期間や設置形態によって大きく性格が異なる。

代表的には、年間を通じて営業する通年リンク、冬季のみ営業する冬季リンクがある。

さらに、夏季はプールとして使用し冬季にスケートリンクへ転換するプール転換型、グラウンドや広場などに季節的に設営するグラウンド設営型、商業施設や公園、イベント会場に短期間設置する冬季イベント型なども存在する。

通年リンクは、年間を通じて安定した利用機会を提供できる一方、冷凍設備や建物設備の運転期間が長く、電力コストや保守費の負担も大きい。

冬季リンクは、営業期間が限られるため一見すると低コストに見える場合がある。

しかし実際には、設営、冷却立ち上げ、製氷、営業期間中の氷質維持、撤去、翌年への保管・修繕など、短期間に業務が集中する。

プール転換型では、夏季プールと冬季リンクで同じ施設基盤を活用できる利点がある一方、防水、床面、冷却設備、利用者導線、衛生管理、季節ごとの切替工事が課題となる。

グラウンド設営型では、既存の土地や公共空間を活用できるが、下地条件、水平性、排水、断熱、ブライン配管、撤去後の原状回復が重要となる。

冬季イベント型では、短期間で集客効果を出しやすい一方、設営撤去費、レンタル機材費、臨時スタッフ、広告費、天候リスクを踏まえた収支設計が必要となる。

したがって、スケートリンクの費用や運営条件を評価する際は、単に通年か冬季かだけでなく、設置形態、転用元施設、営業期間、設営撤去範囲、機材提供、冷凍設備運転、緊急対応を含めて見る必要がある。

2.4 老朽化と地域偏在

多くのスケートリンクでは、冷凍設備、配管、ブライン設備、整氷車、貸靴、建物設備などが長期間使用されている。

設備更新には大きな費用がかかるため、修繕や延命運用によって対応している施設も少なくない。

しかし、設備更新を先送りする場合、突発故障、氷質不良、営業停止、委託費増加などのリスクが残る。

また、スケートリンクは地域偏在が大きい施設である。

近隣に代替施設がない地域では、施設の存廃が学校授業、地域スポーツ、競技活動、冬季レジャーに与える影響も大きい。


3. 運営収支の主要論点

3.1 電力コスト

スケートリンク運営において、電力コストは最重要項目の一つである。

冷凍機、ポンプ、照明、空調、給排水設備、事務設備など、リンク運営には多くの電力が必要となる。

特に氷を維持するための冷凍設備は、気温、湿度、日射、氷厚、営業時間、利用人数、建物断熱、設備効率によって電力使用量が変動する。

電力単価が上昇すると、来場者数や料金体系が同じでも収支は悪化する。

また、電力料金は使用電力量だけでなく、一定時間内の最大需要電力を基準とする基本料金の影響も受ける。冷凍機、ポンプ、空調、照明その他の設備が同時に高負荷で運転すると、短時間の電力ピークによって、その後の電力基本料金が上昇する場合がある。

そのため、スケートリンクの収支計画では、来場者数、電力単価、使用電力量だけでなく、最大需要電力、設備の起動時間、同時運転の状況を含めて検討する必要がある。

3.2 冷凍設備

冷凍設備は、スケートリンクの心臓部である。

冷凍機の能力、ブライン循環、配管、ポンプ、熱交換、断熱、制御方式などが、氷質、電力コスト、保守費に影響する。

設備更新には大きな初期投資が必要となる。

一方で、古い設備を延命して使用する場合、修繕費、故障リスク、運転効率低下、保守委託費の増加が発生しやすい。

したがって、冷凍設備を評価する際は、単に「更新するか、しないか」ではなく、更新費、修繕費、電力コスト、運営委託費、故障時リスクを総合的に比較する必要がある。

3.3 減価償却

設備更新を行うと、会計上は減価償却費が発生する。

減価償却費は実際の現金流出とは異なるが、事業収支や指定管理者の採算性を評価するうえでは重要な項目である。

スケートリンクでは、冷凍機、配管、整氷車、建物設備、貸靴、備品など、多くの資産が必要になる。

そのため、設備投資後の収支を見る場合は、営業利益、キャッシュフロー、減価償却費を分けて確認する必要がある。

3.4 人件費

スケートリンクでは、受付、貸靴、リンク監視、整氷、設備確認、学校団体対応、清掃、緊急対応など、多様な人員配置が必要となる。

特に初心者や子どもが多い施設では、安全管理のためのスタッフ配置が重要である。

人件費を単純に削減すると、安全性やサービス品質が低下する可能性がある。

一方で、貸靴管理、受付、予約、団体導線、備品管理などは、業務設計やDXによって効率化できる余地がある。

3.5 貸靴・教室・団体利用

スケートリンクの収益は、一般滑走料だけでは安定しにくい。

貸靴、スケート教室、学校授業、団体利用、貸切利用、イベント、物販、飲食などの周辺収益が重要になる。

特に貸靴は、利用者体験、安全性、回転率、メンテナンス、在庫管理に関わる重要な運営資産である。

サイズ管理、乾燥、研磨、破損管理、貸出返却の効率化は、収益改善と安全管理の両面で重要である。

3.6 予約型利用・競技利用による経営安定性

公共スポーツ施設では、当日利用や一般来場だけでなく、予約型利用、団体利用、教室利用、競技団体による定期利用などの計画的な利用枠が、施設運営の安定性に寄与する。

スケートリンクにおいても、一般滑走の来場者数は、天候、曜日、学校行事、地域イベント、気温などにより変動しやすい。

そのため、一般滑走収入だけに依存すると、収支の見通しが立てにくくなる。

一方で、フィギュアスケート、アイスホッケー、スピードスケート等の競技利用、チーム利用、クラブ利用、教室利用、貸切利用を組み込むことで、平日や早朝・夜間などの時間帯を含めた稼働率を高めやすくなる。

予約型利用は、単に利用料収入を確保する仕組みではなく、競技利用や団体利用を一定の時間枠として把握することで、施設側が稼働率、整氷頻度、冷凍設備運転、人員配置、年間収支を計画しやすくするための運営基盤である。

特に氷上競技では、競技種目や利用水準によって求められる氷質、整氷頻度、利用時間帯が異なる。

そのため、予約型利用を適切に設計することは、収益の安定だけでなく、氷質管理、競技環境、安全管理、施設全体の運営計画にも関係する。

公共施設では、収益性だけでなく、地域住民の利用機会、競技者の練習環境、学校教育、スポーツ振興を両立する必要がある。

そのため、予約型・競技型・定期利用型の設計は、経営安定性と公共性を両立させる重要な運営要素となる。

なお、売店、物販、飲食、関連用品の販売・レンタル等の周辺収益は、施設規模や運営条件に応じて検討する余地がある。

ただし、公共施設では過度に物販収益へ依存するのではなく、まずは利用枠の設計、競技利用との調整、教室運営、一般滑走との時間配分を通じて、安定した施設利用を作ることが重要である。


4. 冷凍設備更新と延命運用

4.1 更新投資

冷凍設備の更新は、スケートリンクの継続性を左右する大きな判断である。

更新により、運転効率、信頼性、保守性、制御性が改善する可能性がある。

一方で、初期投資が大きく、予算化、議会説明、補助金、金融機関対応、工期調整などが必要となる。

公共施設では、単年度予算の制約から大規模更新が難しい場合もある。

その場合、部分修繕や延命運用が選択されることがある。

4.2 修繕

修繕は、設備更新に比べて短期的な負担を抑えやすい。

しかし、修繕を積み重ねても、設備全体の老朽化や効率低下が解消されるとは限らない。

修繕費が毎年発生する場合、数年間の累計では更新費に近づくこともある。

そのため、修繕判断では、単年度費用だけでなく、複数年の累計費用と故障リスクを確認する必要がある。

4.3 委託費への転嫁

設備更新を行わず、既存設備のまま運営を継続する場合、専門業者による管理委託費が増加することがある。

これは、古い設備を運用するために、専門技術者の対応、緊急対応、保守、調整、リスク引当が必要になるためである。

したがって、委託費が高いか安いかを判断する際には、単なる作業費だけでなく、設備延命リスクや技術責任が含まれているかを確認する必要がある。

4.4 設備更新を先送りするリスク

設備更新を先送りすること自体が直ちに不適切とは限らない。

財源、営業期間、利用者数、地域需要を踏まえれば、段階的な修繕や延命運用が合理的な場合もある。

しかし、先送りには以下のリスクがある。

・突発故障による営業停止

・氷質不良による利用者満足度低下

・修繕費の増加

・専門業者への依存度上昇

・委託費の上昇

・安全管理上のリスク

・将来世代への更新負担の先送り

そのため、設備更新と延命運用は、単年度費用ではなく、複数年の総費用とリスクで比較する必要がある。


5. 指定管理・委託仕様の論点

5.1 製氷・整氷

製氷・整氷は、単なる清掃や表面管理ではない。

氷厚、氷温、表面状態、利用者数、競技種目、外気温、日射、湿度、冷凍設備の状態によって、必要な作業内容は変わる。

仕様書上で「整氷管理」と記載されていても、実際には、製氷、氷質管理、冷凍設備運転、整氷車管理、補修、営業判断まで含まれている場合がある。

したがって、委託仕様では、製氷・整氷の範囲、責任、作業頻度、判断権限を明確にする必要がある。

5.2 冷凍設備運転

冷凍設備運転は、スケートリンク運営の根幹である。

冷凍機の設定、ブライン温度、運転時間、ポンプ運転、外気条件への対応は、電力コストと氷質に直結する。

仕様書では、誰が運転設定を判断するのか、異常時に誰が対応するのか、設備保守業者との責任分界をどうするのかを明確にする必要がある。

5.3 設営撤去

冬季リンクや仮設リンクでは、設営撤去が大きな業務となる。

設営には、下地、断熱、防水、ブラインホース、配管、冷凍設備接続、散水、結氷、仮設設備、安全柵、動線整備などが含まれる。

撤去には、排水、解氷、機材回収、清掃、補修、保管、翌年に向けた点検が含まれる。

設営撤去費を評価する際は、単なる作業人件費だけでなく、機材、保管、再利用、破損、次年度準備を含めて見る必要がある。

5.4 緊急対応

スケートリンクでは、氷質不良、設備異常、転倒事故、天候変化、停電、漏水、機材故障など、緊急対応が発生する可能性がある。

仕様書では、緊急時の連絡体制、対応時間、責任分界、費用負担、営業可否判断を明確にする必要がある。

緊急対応を曖昧にしたまま低価格で委託すると、実際の事故・故障時に対応遅れや費用負担トラブルが発生しやすい。

5.5 責任分界

指定管理や業務委託では、施設所有者、指定管理者、設備保守業者、製氷業者、イベント運営者の責任分界が重要である。

特に、冷凍設備の故障、氷質不良、利用者事故、設備老朽化、修繕費負担については、契約前に整理しておく必要がある。

責任分界が曖昧なまま契約すると、受託者に過大なリスクが移る場合もあれば、逆に所有者側が想定外の負担を負う場合もある。

5.6 価格妥当性

スケートリンクの委託費や指定管理料は、単純な年額比較では評価しにくい。

同じ「整氷管理業務」でも、以下の条件によって適正価格は大きく変わる。

・通年施設か冬季施設か

・屋内か屋外か

・冷凍設備運転を含むか

・設営撤去を含むか

・整氷車や機材レンタルを含むか

・修繕や消耗品を含むか

・緊急対応を含むか

・営業判断や氷質責任を含むか

・公共施設としての報告業務を含むか

そのため、委託費を見る際は、金額だけでなく、業務範囲と責任範囲を分解して評価する必要がある。


6. 行政資料から見る委託費・指定管理料

6.1 公開資料から確認できる事例

自治体の入札結果、契約結果、指定管理者評価資料、募集要項、決算資料等から、スケートリンク関連業務の委託費や指定管理料を確認できる場合がある。

ただし、公開資料で確認できる金額は、必ずしも業務内容を完全に表しているわけではない。

同じ「管理業務」という名称でも、施設規模、設備状態、営業期間、設営撤去、機材提供、保守範囲、緊急対応の有無によって、実態は大きく異なる。

そのため、行政資料を比較する際は、契約名だけで判断せず、仕様書、設計書、予定価格、見積内訳、業務報告書、指定管理評価資料をあわせて確認する必要がある。

6.2 年額比較の注意点

スケートリンク関連業務の金額を年額で比較すると、実態を見誤ることがある。

通年施設では、年間を通じた運営管理、設備保守、利用者対応が含まれる。

一方、冬季リンクでは、営業期間は短くても、設営、製氷、営業、撤去が短期間に集中する。

また、設備更新を行わずに延命運用している施設では、委託費の中に技術対応やリスク費が含まれている可能性がある。

したがって、年額が高いか安いかだけではなく、実稼働期間、業務密度、設備状態、責任範囲を確認する必要がある。

6.3 実稼働期間で見る必要性

冬季リンクや仮設リンクでは、実稼働期間で費用を評価することが重要である。

例えば、営業期間が数か月であっても、設営準備、冷却立ち上げ、製氷、撤去、保管、翌年準備まで含めると、実際の業務期間は営業期間より長くなる。

一方で、実作業人件費、機材費、保守費、管理費、リスク費を分解すると、委託費の中でどこに費用がかかっているかを確認できる。

公共施設においては、委託費の妥当性を説明するためにも、実稼働期間と業務範囲に基づく積算の透明性が重要である。


7. 現場から見た改善余地

7.1 氷厚

氷厚は、氷質、安全性、冷却効率に関わる重要な要素である。

厚すぎる氷は冷却負荷を増やす可能性があり、薄すぎる氷は安全性や耐久性に問題が出る可能性がある。

適切な氷厚は、施設の構造、利用目的、冷凍設備能力、営業期間、利用者数によって異なる。

そのため、氷厚は経験則だけでなく、運転条件と利用条件を踏まえて管理する必要がある。

7.2 運転時間

冷凍設備の運転時間は、電力コストに大きく影響する。

営業時間、外気温、日射、夜間冷却、氷厚、利用者数を踏まえて、必要な冷却と過剰な冷却を切り分けることが重要である。

ただし、省エネを優先しすぎると、氷質不良や安全リスクにつながる可能性がある。

運転時間の最適化は、単なる節電ではなく、氷質、安全性、営業品質とのバランスで考える必要がある。

7.3 利用者導線

利用者導線は、安全性と運営効率に直結する。

受付、貸靴、着替え、リンク入口、初心者エリア、休憩場所、トイレ、救護対応、出口動線が整理されていないと、混雑、転倒、スタッフ負担が増える。

特に学校団体や子ども利用が多い施設では、利用前説明、貸靴配布、サイズ交換、リンク入場、退場、集合場所の導線設計が重要である。

7.4 団体営業

団体利用、学校授業、貸切利用は、スケートリンクの安定収益につながる可能性がある。

一般来場者だけに依存すると、天候、曜日、イベント、季節要因で売上が変動しやすい。

団体利用を組み込むことで、平日稼働率の向上や地域との関係構築が期待できる。

ただし、団体対応にはスタッフ配置、貸靴在庫、安全説明、保険、予約管理が必要となる。

7.5 貸靴管理

貸靴は、スケートリンク運営における重要な資産である。

サイズ在庫、返却管理、乾燥、研磨、破損、衛生管理、更新時期を適切に管理することで、利用者満足度と安全性が向上する。

また、貸靴管理の効率化は、受付混雑の緩和、人件費削減、回転率向上にもつながる。

7.6 省エネ運用

省エネ運用は、単に電力使用量を減らすことではない。

氷質、安全性、営業品質を維持しながら、冷凍設備の運転条件、氷厚、営業時間、整氷頻度、断熱、遮熱、夜間冷却を見直す必要がある。

スケートリンクの省エネは、設備更新だけでなく、日々の運用改善によっても効果が出る可能性がある。

また、省エネ運用では、年間または月間の使用電力量だけでなく、最大需要電力の管理も重要である。冷凍機、ブラインポンプ、空調、照明、整氷関連設備等の起動時刻を調整し、同時に大きな電力を使用する状態を避けることで、氷質や営業品質を維持しながら電力基本料金を抑えられる可能性がある。

したがって、設備単体の効率だけでなく、施設全体の電力使用状況を把握し、運転スケジュールを総合的に設計する必要がある。


8. 新設・再整備前に確認すべきチェックリスト

8.1 計画段階

・想定利用者は誰か

・学校利用、競技利用、一般利用、観光利用の比率はどうか

・通年リンクか冬季リンクか

・屋内か屋外か

・冷凍設備の方式は適切か

・電力契約、電力単価、基本料金をどう見込むか

・冷凍機等の最大需要電力と設備の同時運転をどう見込むか

・年間運営費をどの程度見込むか

・利用料金だけでどこまで回収できるか

・地域に代替施設はあるか

・将来の設備更新費をどう考えるか

8.2 仕様書作成段階

・製氷と整氷の範囲は明確か

・冷凍設備運転の責任者は誰か

・緊急対応の範囲は明確か

・修繕費の負担区分は明確か

・整氷車、貸靴、備品の所有・管理は明確か

・設営撤去を含むか

・氷質不良時の判断権限は誰にあるか

・営業停止時の責任と費用負担は明確か

・報告書、点検記録、運転記録の提出範囲は明確か

8.3 事業者選定段階

・氷上施設の運営実績があるか

・冷凍設備に関する知識・体制があるか

・製氷・整氷の体制があるか

・安全管理体制が具体的か

・人員配置が現実的か

・見積金額と業務範囲が整合しているか

・設備老朽化リスクを理解しているか

・委託費が過小または過大になっていないか

・緊急対応の体制があるか

・地域利用への理解があるか

8.4 運営開始後

・電力使用量、最大需要電力、電力基本料金を定期的に確認しているか

・冷凍機、ポンプ、空調、照明等の同時運転による電力ピークを確認しているか

・氷厚、氷質、温度を記録しているか

・冷凍設備の異常兆候を確認しているか

・貸靴の破損、研磨、更新状況を管理しているか

・学校団体や初心者利用の事故リスクを確認しているか

・利用者の声を改善に反映しているか

・売店、教室、団体利用など周辺収益を見直しているか

・修繕履歴を蓄積しているか

・次年度に向けた改善点を整理しているか


9. まとめ

「建てる前に、運営条件を見る」

スケートリンクは、地域にとって貴重なスポーツ・レジャー資源である。

しかし、冷凍設備、電力コスト、製氷・整氷、安全管理、貸靴管理、修繕、指定管理、委託仕様など、多くの要素が関係するため、計画段階で運営条件を十分に整理しなければ、開業後に収支や管理面で課題が表面化しやすい。

特に公共施設では、建設費や整備費だけでなく、運営開始後に毎年発生する電力使用量、最大需要電力に伴う基本料金、設備更新、修繕、委託費、指定管理料を含めて検討する必要がある。

重要なのは、単に施設を建てることではなく、地域に必要な形で続けられる施設にすることである。

そのためには、新設、再整備、設備更新、指定管理、運営委託を検討する段階で、現場運営の視点を取り入れることが有効である。

スケートリンクの計画には、建築、設備、行政、経営、現場運営の視点が必要である。

建てる前に、運営条件を見る。

委託する前に、責任範囲を見る。

更新する前に、延命リスクを見る。

続けるために、現場で何が起きるかを見る。

本白書が、氷上施設の継続可能性を検討するための一助となれば幸いである。


相談窓口

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スケートリンクや氷上施設について、計画前の情報収集、仕様書作成前の論点整理、既存施設の運営改善など、初期段階からお気軽にご相談ください。

テラフォーマーフロストワークスでは、実際にスケートリンクを運営する立場から、運営費、冷凍設備、電力コスト、製氷・整氷、安全管理、委託仕様、指定管理条件などの論点整理をお手伝いします。

本資料に関するお問い合わせ

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テラフォーマーフロストワークス

氷上施設運営支援担当:市川 浩一

Web:https://terraformer-frostworks.com/

Email:info@terraformer-frostworks.com

都道府県別施設一覧

本版では掲載方針のみ公開し、都道府県別一覧データは次回改訂で公開予定です。

  • 対象: 公共施設・民間施設・季節運用施設(把握可能範囲)
  • 単位: 施設単位(同一運営でも拠点ごとに集計)
  • 公開予定: 年次更新時(2027版)

定義・集計基準

  • 通年リンク: 年間を通じて氷上運用する施設
  • 冬季リンク: 冬季限定で運用する施設
  • 転換型: プール等の他用途から季節転換する施設
  • 比較基準: 年額比較だけでなく実稼働期間、設営撤去、責任範囲を加味
  • 電力評価: 使用電力量に加えて最大需要電力と基本料金影響を評価

参考資料

  • 自治体公開資料(入札結果、契約結果、指定管理評価資料、募集要項、決算資料)
  • 施設運営記録(運転記録、修繕履歴、利用状況)
  • 設備保守資料(冷凍設備、整氷関連、安全管理)
  • 現場運営ヒアリング(運営者、担当者、関係事業者)

更新履歴

  • 2026-07-13: 初版公開(HTML版 / PDF版)
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担当
氷上施設運営支援担当: 市川 浩一