短い答え
スケートリンクは、一般に氷の下の配管へ冷たい液体を循環させ、水と氷から熱を取り除くことで凍らせます。冷凍機は「冷たさを作って置く機械」というより、リンク側の熱を別の場所へ運び出す設備です。
氷が完成した後も周囲から熱が入り続けるため、温度を計測しながら冷却を続けます。ただし、床の構造や冷却方式、使用する液体は施設によって異なります。
このページの要点
- 普通の圧力下にある純水は、およそ0 ℃で凍結・融解する。
- 水を0 ℃まで冷やすだけでなく、液体から固体へ変えるための熱も取り除く必要がある。
- 多くのリンクでは、氷の下の配管へブライン等の二次冷媒を循環させる間接冷却方式を使う。
- 冷媒とブラインは役割が異なる。両者を同じものとして説明しない。
- 氷には空気、天井、照明、人、整氷水、地面等から熱が入るため、製氷後も温度管理が必要である。
- 直接冷却方式、コンクリート床、冷却マット等もあり、全施設の構造が同じとは限らない。
1. 水が氷になるとき、何が起きているか
水は温度によって状態を変える
普通の圧力下にある純水は、およそ0 ℃で液体から固体の氷へ変わります。逆に氷へ熱を加えると、およそ0 ℃で水へ戻ります。
ただし、「温度計が0 ℃を示した瞬間に、すべての水が一斉に凍る」わけではありません。水に溶けている物質、圧力、容器、核生成の起こりやすさ等によって凍結の様子は変わり、過冷却が起こる場合もあります。小学生向けには「普通の水は0 ℃くらいで凍り始める」と説明するのが適切です。
塩類等が水に溶けると凝固点は下がります。この性質が、0 ℃より低い温度でも流動性を保つブライン等を熱の運搬に利用できる理由の一つです。
0 ℃まで冷やした後にも、熱を取り除く
リンクを製氷する冷却負荷は、次の3段階に分けて考えると説明しやすくなります。
- 水とリンク床を、初めの温度から凍結温度付近まで冷やす。
- 水を液体から固体へ変えるため、凝固潜熱を取り除く。
- できた氷を、施設が定める運用温度までさらに冷やす。
水が凍っている途中は、熱を取り除いていても温度変化が小さく見える区間があります。冷却のエネルギーが、主に状態変化へ使われるためです。第4学年の実験では、温度だけでなく水と氷の割合を観察させると、この点を捉えやすくなります。
水が氷になると体積が増える
小学校第4学年理科では、「水は温度によって水蒸気や氷に変わること」とともに、「水が氷になると体積が増えること」を扱います。
氷は液体の水より密度が小さいため、水に浮きます。児童には、密度の計算へ進む前に「同じ量の水でも、氷になると少し広い場所を使う」と説明できます。
2. スケートリンクは「熱を運び出す」ことで凍る
日常語では「冷たさを送る」と表現しますが、科学的には「リンクから熱を取り除き、別の場所へ移す」と捉える方が正確です。
冷凍設備は、主に次の熱を処理します。
- 水と氷がもつ熱
- リンク上の空気から伝わる熱
- 天井や壁、照明等から放射で入る熱
- 利用者や整氷作業によって加わる熱
- 湿った空気中の水分が氷面で凝結・着霜するときの熱
- 床下や地面側から入る熱
- ポンプ等の運転に伴う熱
したがって、リンク室の空気全体を氷点下にしなくても、氷の下から十分に熱を取り除けば氷を維持できます。観客席や受付が氷点下でないのにリンクが凍っているのは、このためです。
3. よく使われる間接冷却方式
多くのスケートリンクでは、冷凍機とリンク床の間を、凍りにくい液体が閉じた回路で循環します。これを間接冷却方式と呼びます。
一般的な熱の流れは次のとおりです。
- リンクの氷や床から、配管内のブライン等へ熱が移る。
- ポンプが温まったブライン等を冷凍機側へ戻す。
- 蒸発器(熱交換器)で、ブライン等の熱が冷媒へ移る。
- 圧縮機が冷媒を圧縮する。
- 凝縮器で、集めた熱を屋外や冷却水等へ放出する。
- 冷えたブライン等が再びリンク床へ送られる。
この循環を続けることで、水を凍らせ、完成後の氷を保ちます。凝縮器側で得られる熱は、条件が合えば給湯、暖房、融雪等へ回収できます。
4. 冷媒とブラインの違い
授業や見学時に混同されやすい用語です。
| 用語 | 主な役割 | 一般的な間接冷却方式で流れる場所 |
|---|---|---|
| 冷媒 | 蒸発・凝縮等の状態変化を利用し、冷凍サイクル内で熱を運ぶ | 冷凍機の冷媒回路 |
| ブライン・二次冷媒 | リンク床と蒸発器の間で熱を運ぶ。低温でも凍りにくい液体を使う | リンク床の配管と冷凍機の熱交換器の間 |
「ブライン」は本来、塩類水溶液を指す語ですが、現場ではグリコール系等を含む二次冷媒の呼称として広く使われることがあります。記事内では、必要に応じて「ブライン等の二次冷媒」と表記すると誤解を減らせます。
使用される冷媒・二次冷媒は、設備年代、方式、法規、安全性、環境性、腐食、粘度、効率等を考慮して選ばれます。特定の液体を全施設共通として示さないようにします。
5. 直接冷却方式もある
すべてのリンクがブラインを使うわけではありません。リンク床の配管自体を冷凍サイクルの蒸発器として使い、冷媒を直接循環させる方式もあります。近年は二酸化炭素(CO2、R744)を用いる構成もあります。
| 方式 | リンク床を流れるもの | 説明上の注意 |
|---|---|---|
| 間接冷却 | ブライン等の二次冷媒 | 冷媒回路とリンク床回路が熱交換器で分かれる |
| 直接冷却 | 冷媒 | リンク床配管が冷凍サイクルの一部になる |
児童向け教材では代表例として間接冷却を示し、「施設によって方式が違う」と注記します。施設見学では、実際の設備方式を確認せずに「この配管にはブラインが流れている」と断定しないことが重要です。
6. 氷の下には何があるか
固定式のリンクでは、上から順に次のような構成が見られます。
- 滑走する氷
- 冷却配管を組み込んだ床・スラブ
- 断熱層
- 防水層、構造床、地盤側の層等
- 必要に応じて床下凍結を防ぐ仕組み
これは代表例であり、順序、材料、配管位置、防水方法は施設によって異なります。仮設・移動式リンクでは、地面や既存床の上に冷却マットや配管を敷く方式もあります。
7. 製氷後も冷却が必要な理由
氷は完成すれば終わりではありません。営業中も周囲から熱が入り続けます。
氷温、氷厚、室温、湿度、天候、利用人数、競技、整氷条件等を見ながら、冷凍設備を制御します。冷却能力が足りなければ氷が軟らかくなり、必要以上に低温へ下げれば電力消費が増える可能性があります。
氷が厚すぎると、氷そのものが熱を通しにくくする層となり、冷却効率や管理へ影響します。「厚い氷ほど強くてよい」とは限りません。
ここで重要なのは、特定の温度や厚さを全施設の正解として教えないことです。競技、施設構造、設備能力、運用方針によって管理値は異なります。
8. 授業で扱うときのポイント
第4学年理科との接続
本テーマは、小学校第4学年理科「金属、水、空気と温度」のうち、水の状態変化に直接対応します。
学習指導要領解説では、水の状態と温度の変化を関係付けて調べ、水が温度によって水蒸気や氷へ変わること、水が氷になると体積が増えることを捉えるよう示しています。
45分で扱う場合の例
| 時間 | 活動 | 教師の留意点 |
|---|---|---|
| 5分 | 「なぜ広いリンクが凍るのか」を予想する | 冷たい空気だけで凍らせるという予想も受け止める |
| 10分 | 水と氷の状態、温度、体積変化を確認する | 0 ℃で瞬時に全量が凍るとは説明しない |
| 10分 | リンク断面図で熱の移動を読む | 「冷たさ」より「熱を運び出す」を中心語にする |
| 10分 | 入ってくる熱を班で分類する | 空気、人、光、地面、整氷水等を扱う |
| 7分 | 自分の言葉で仕組みを書く | 「配管がある」だけでなく熱の行き先を説明させる |
| 3分 | まとめと次時への問い | 次の教材「大きなリンクの凍らせ方」へ接続する |
安全上の注意
- 凍結実験は教科書、学校の安全基準、使用器具の取扱いに従う。
- 寒剤、温度計、冷却容器は先生の管理下で扱う。
- 密閉容器や満水のガラス容器を凍らせない。
- 冷凍機室、制御盤、高圧電気設備、ポンプ、配管、整氷車の作業区域へ児童を無断で近づけない。
- 設備見学では、施設担当者が指定した導線と距離を守る。
9. 児童から出やすい質問
Q1. リンクの部屋全体が0 ℃より低いのですか?
必ずしもそうではありません。主に氷の下から熱を取り除くため、空気が0 ℃より高くても氷を維持できます。室温は施設や場所によって異なります。
Q2. 水は0 ℃になったら、すぐ全部が凍りますか?
すぐに全部が凍るとは限りません。水を氷へ変えるためにも熱を取り除く必要があります。また、水に溶けている物質や冷やし方等でも凍り方が変わります。
Q3. 氷は厚いほどよいのですか?
いいえ。必要以上に厚い氷は熱を通しにくくし、冷却や管理へ影響します。適切な厚さは施設と用途に合わせて管理されます。
Q4. 冷凍機は冷たいものを作る機械ですか?
授業では「リンクから熱を取り、別の場所へ移す機械」と説明すると理解しやすく、科学的にも適切です。
Q5. どのリンクも同じブラインを使っていますか?
いいえ。塩類水溶液、グリコール系等の二次冷媒を使う施設があり、直接冷却方式ではリンク床へ冷媒を流す場合もあります。
10. 対応する教材・次に読む資料
授業後に、近くのスケートリンクを調べる
発展活動として、全国スケート施設一覧から地域の施設を調べることができます。通常利用の条件は、各施設の公式案内をご確認ください。
施設見学は、必ず訪問先へ事前にご確認ください。 学校・団体での訪問、職員への質問、撮影、バックヤードや冷凍設備等の内部見学には、事前の許可や日程調整が必要な場合があります。本教材は、各施設が見学を受け入れることを保証するものではありません。営業時間中の運営や一般利用者の妨げにならないよう、施設が案内する範囲と方法を守ってください。
出典・確認資料
- 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編|文部科学省
- Ice Rink Guide|International Ice Hockey Federation
- Ice Rinks|ASHRAE Handbook
- Physical Properties of Secondary Coolants (Brines)|ASHRAE Handbook
- Water|NIST Chemistry WebBook
- Water Density|U.S. Geological Survey
- Can the ocean freeze?|National Oceanic and Atmospheric Administration
出典の読み方
文部科学省資料は学習内容との対応確認に使用しています。IIHFおよびASHRAE資料は、代表的なリンク設備、熱負荷、直接・間接冷却方式の確認に使用しています。水の物性に関する資料は、0 ℃を目安とする説明、密度、溶解物による凝固点変化の確認に使用しています。
設備方式・冷媒・法制度は施設と時期によって異なります。見学先固有の設備を説明する場合は、その施設の図面、機器仕様、担当者説明を優先してください。
最終確認日:2026年8月8日 発行:テラフォーマーフロストワークス 出典:テラフォーマーフロストワークス 教材・データの利用について

